2013年7月19日金曜日

こーぢ倶楽部

写真に一緒に写っているのは、元プロロードレーサー、相澤康司(旧姓福島)さん。僕は一年程前から、彼の主催する「こーぢ倶楽部」というアマチュアロードレーサー向けの自転車教室に1~2ヶ月に一度通っている。そして今日も久しぶりの受講!

彼はヨーロッパを中心に世界で活躍した知る人ぞ知る名ロードレーサー。兄の福島晋一氏も現役のプロレーサーでイタリアを中心に活躍中。康司さんのキャリアはネット上でも知る事ができるが、その個性的な走りは世界のレーサーからも注目を浴びるほど破天荒なスタイルであった。それは一人で逃げをうって何が何でも勝利をつかむという(ロードレースは基本的にチームプレイなのだが)無謀ともいえる走りで、日本人がヨーロッパでいかに勝利にからむかという試みをストレートに体現した希有な存在である。

10年ほど前だっただろうか?僕は日本で開かれる世界的レース「ジャパンカップ」で初めて彼を見た。レース序盤からアタックを決め逃げ切るという作戦にでた彼は終盤集団に吸収され勝利に結びつかなかったが、そのガッツ溢れる走りは印象的だったし観る者を興奮させてくれた。

それから何年か後、僕が富士ヒルクライムのレースにエントリーした際、レース前日のイベント会場の片隅で現役を退いたばかりの彼が、一人でロードバイクの乗り方についてレクチャーしている現場に出くわしたのである。その出で立ちは3本ローラーで両手放しをしながらゆっくりペダルを回し、理想的なポジションについてひたすら語っているというもの。何気ない動作だが、それを見て「何でこんな事ができるんだろう?」とうその曲乗り的な技にビックリしたのが妙に記憶に残った。

僕はロードバイクに乗り始めてから既に25年くらい時間が経っている。最初はレースに出たりする訳でもなく、自転車で長距離を移動できる事がただ楽しくてその魅力に取憑かれたのだが、その乗り方に関してノウハウも知らずただ自己流で乗っていただけ。ところがスピードの出る峠の下り道などでいつも恐怖心と隣り合わせで走っていたのである。この恐怖心はいつか克服できるものと思っていたが、何年経ってもそれは拭えず、それはきっと自分の乗り方に問題があるのだとわかっていても何もできなかった。

およそアマチュアレースに出るような人達は各地にあるクラブチームに所属して、先輩方からロードバイクの乗り方やレースでの心構えなど教わるものなのだろう。しかし個人でバイクに乗る限り、正しいロードバイクの乗り方など知る由もない。それは日本にロードレースという文化は無く、自転車に関してはママチャリが基本?といったベースしか無いのが実情。近年教則本的書籍が出回るようになったが、所詮文章での説明であってどう身体にフィードバックしていいか分からない。

ある日、ネットで康司さんの情報を何気なく追っかけていたら、数年前からロードレーサー向けの教室をやっているという。あの富士山で見かけた印象が強く残っていたので興味を惹かれ、その門をたたくことに。実際彼に会ってみると、世界で活躍したアスリートなのにざっくばらんで偉そうな所が無く、その清々しい出で立ちは一流のアスリートならではと感じさせられる。なんだかミュージシャンに通じる気質の持ち主というか、妙に気が合ってしまった。時には自分のライヴも聴きに来てくれる。

レクチャーでの彼の解説は決して流暢ではないが、こちらもセンスを尖らせながらその意図を汲んで体得していけば、そのひとつひとつが僕にとって新鮮な体験であった。数回受講すれば解るものとたかをくくっていたが、教えてもらうテクニックを身につけるには今まで使った事の無い筋肉を発達させなければレクチャーの意味を理解できないといった具合で、そう簡単に身につくという訳ではない。そしてあっという間に一年が過ぎ、今もまだ成長中というところ。

彼のレクチャーの主旨は、プロのレーサーも初心者の乗り手も、同じ特殊な構造をしたロードバイクという自転車に乗る以上は、運動の強度こそ差はあるものの、安全に自転車を乗りこなすというテクニックに差は無いはずだという事。その意味はレクチャーを重ねるほど身に染みて解ってくる。

近年、自転車は未だかつて無いロードバイクブーム(ピストバイク含め)。一時は絶滅危惧種とさえ言われたドロップハンドルのレース用バイク。都会ではマナーの悪い乗り手が目につくばかりか、その事故の多さは深刻な問題でもある。サイクルイベントも各地で盛んに行われているが、必ずと言っていいほど事故がつきまとう。時には死亡事故まで起きているのである。何十万円もするバイクを手に入れたはいいが、ママチャリに乗れるという次元と同じく、ロードバイクにも上手に乗れてるなんて思ったら大間違いである。あまりにその乗り方に無頓着ではなかろうか?所詮日本ではママチャリこそが自転車文化。もしもロードバイクに乗って不安があるのなら、康司さんのレクチャーを一度体験してみたらいいと思う。

余談かもしれないが、現在日本人で世界のレースシーンで活躍しているのはわずか数名。現在ツールドフランスを走っている新城幸也選手は康司さんの弟子的存在。前述の記事で幸也選手と一緒に写っている写真もこーぢ倶楽部のイベントでの一コマ。お兄さんの晋一選手やサクソティンコフの宮澤崇史選手も皆仲間で、同等の実力の持ち主だ。彼等に続く若手選手で世界へ飛び出している人は少なく内向きな日本のレース界。今世界で活躍するために必要な「力」とは何であるかを知っている先輩に教えを請うのも一手ではないだろうか。

3 件のコメント:

  1. 福島康司選手が逃げたジャパンカップのレースは、私も古賀志林道の登りで応援していました。下ハンを持ってもがくように登る姿に感動したことを思い出しております。独特のレーススタイルとレース後のハーモニカ演奏は、海外でも人気がありましたね。
    先輩の福島兄弟、浅田顕監督、その師匠の大塚和平先生へと続く後輩を熱心に育成してきた方たちの地道な努力が、今の新城選手の成功に繋がっているのかもしれません。
    機会がありましたら、レクチャーのエッセンスをお教えいただければ幸いです。

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  2. ご無沙汰しています。
    こーぢ倶楽部行ってたんですね。
    お店のイベントでちょっとだけ面識あったんで、、、
    3本ローラーでハーモニカ
    とても本気で乗ってるとは思わせない?
    最初はお笑いの方と思ったほど
    michiaquiさんも是非タイコ叩きながら
    なんていかがでしょう?

    先日oukaさんと八ヶ岳でMTB乗ってきました。今度は千倉まで行っちゃおうかな。

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    1. Michiaki Tanaka2013年9月17日 18:37

      最初のレクチャーから、僕が3本ローラー手放しで手拍子させられて、こーぢさんがそれに合わせてトランペットを吹くというセッションでした(笑)。

      またブラリと遊びに来て下さい。みんなでまた走りましょう!

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