2013年10月6日日曜日

美しいフォーム キリエンカ編

またも細か過ぎて分からないシリーズとでもいおうか、コアなチャリンコネタ、且つ長い内容なので、自転車に興味の無い方、スルーお願いします。

集団先頭でチームを引っぱるキリエンカ
こーぢ倶楽部に通い出してからはレースの見方さえ大きく変わって、好きなタイプの選手もフォーム、スピード、レースの展開のさせ方等、それらを支える総合的な資質を見て応援するようになった。前回の同タイトル記事では、フィリップ・ジルベール選手を紹介しながら効率のいいフォーム、ペダリングについて書いたが、今自分の中でヨーロッパのプロのレースシーンに於いて、この効率のいいフォーム、ペダリングがナンバーワンだと思う選手、ヴァシル・キリエンカについてちょっとした考察を。

キリエンカ選手、ベラルーシ出身で昨年までモビスターに所属。今年よりチームスカイに移籍。32歳のベテラン選手と言っていいだろう。タイプとしてパンチャーだが、トラック競技あがりの職人肌。3大ツールでのステージ優勝経験もある実力派トップライダーだ。今年のツールドフランスでは総合優勝したクリス・フルーム選手のアシスト役として活躍。

そのツールドフランスで彼の走りが僕の目を引いた。(写真はTVで流れた映像をそのままデジカメでパチリ)総合優勝を狙うチームスカイはオールスターチームと言っていい程優れた選手が揃っている。フルーム選手を常に集団前方に位置させるため、チームメイトは集団をコントロールすべくハイペースで集団前方を引くのだが、その筆頭がキリエンカ選手。50km/h近いスピードでその先頭を淡々と引く姿を見ると、上体が全くぶれず、ペダルを回す足を見なければまるでデスクワークでもしているかのごとく上体がリラックスしているように見える。しかし運動量、出力はイッパイイッパイなハズ。逆に必死に走っているように見えないので、スポーツ映像としてはオイシクないのでは?とまで思ってしまう。そして体型はすらっとスマートというより、腰回りがガッチリしていてちょっとアジア人的な体型にも見える。そこに親近感を感じたりもして・・・。

さて今年の3大ツールのひとつブエルタエスパーニャ、キリエンカ選手は第18ステージで残り40kmから逃げを決め、単独逃げ切り優勝を果たした。ブエルタではチームに総合優勝を狙う選手がいなかったため、この日は自分でステージ優勝を狙っていたのだろう。

写真を見て欲しい。この日のコースはラスト6kmに激坂が待ち構える頂上ゴール。これはゴール前1kmあたり、画面左下にはこの時の斜度21%の表示が見える。わかる人にはわかると思うが、21%の坂とはとんでもない角度で、普通の人なら自転車で登る事はできないだろう。注目すべきはこの時のキリエンカ選手の姿勢である。静止画ではわかりにくいが、右足大腿を思い切り引き上げながら、足首がリラックスしているので足の甲は正面を向いており、踏み込む左足の力とこの引き足の力のバランスで自転車を垂直に安定させ、この激坂をスイスイ?登ってしまう(顔の表情は苦しそうだが)。背景の下界の景色がこの角度に見えているので、いかに斜度のキツいところ走っているかがわかるだろう。

ヒルクライムを得意とする選手でさえ、この激坂区間はダンシングしてゴリゴリと登っていくので、いかにも斜度がキツいのだなと思えるのだが、キリエンカ選手のあまりにスムースなペダリングと安定した姿勢を見ていると、激坂を登っているように見えないのである。さすがにこの前後では滅多に見せないダンシングを少し交ぜてくるのだが、彼は自転車を殆ど左右に振らずにダンシングする。結局このペースに後続はだれも追いつけずこのままゴールしてしまう。思わず「やったねキリエンカ」とつぶやいてしまった。

そしてこのブエルタエスパーニャ後すぐに開催された世界選手権。その個人TT(タイムトライアル)ステージ、予想通り、トニー・マルティン、ファビアン・カンチェラーラ、ブラッドリー・ウィギンスのTTスペシャリストの三つ巴で、表彰台をこの3人が飾ったのだが、僕が一番嬉しかったのはキリエンカ選手が3位のカンチェラーラ選手から遅れること38秒の差で、4位にはいったことである。あの21%の坂をスイスイ登る感覚の延長線上にTTの走りがあったのだと思う、いやその逆か。

僕がこーぢ倶楽部に通う前なら、こういう渋い選手に目を引かれなかったかもしれない、いや気付くこともなかったかもしれない。目指すはキリエンカ選手のフォームだといえば、「それはトッププロの話でしょ」とかわされそうだが、自転車に乗る基本はプロもアマチュアも同じハズ。目指すイメージをしっかり持つことはとても大事だと思う。

2 件のコメント:

  1. またもや知らない選手の登場。いいね。いぶし銀の雰囲気。
    私はダンシングが苦手というかシッティングで淡々と上りたいので、
    この選手の動画などを拝見して参考にしたいです。
    キリエンカ選手の完成されたフォームが、
    自身の選手生活を長く続けられる理由にもなっているのかなぁ。
    選手それぞれのスタイルを自分に当てはめるのには無理もあるだろうけど、
    「こうありたいなぁ」てイメージを持つのも大事ですよね。
    私は腰痛と闘いながら適当に流しています。また乗りましょう!

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    1. OHKAさま コメントありがとうございます。フォームが美しい選手は選手寿命も長いと思っています。先日ブエルタを40歳過ぎで制したホーナー選手はダンシングがスゴいけれどシッティングは?世界の頂点に立つんだからフォーム云々ではないのかもしれないけれど、やはり上体がブレずにひたすら淡々と走るいぶし銀系の選手が好きですな。チームスカイのチームTTを見ると、みんなものすごいスピードなんだけど、キリエンカ選手だけ腰がローリングしないんだよね。
      とにかくイメージを持って走るのとそうでないとでは、大きく違いがでると思う。
      僕は腰痛も「乗って直す」がスローガン。まあ無理がきかない歳だけど。おたがい身体には気をつけながら長〜く乗りましょう!
      新車買ったので近々ブログにアップしますね。フレームも楽器同様、出会いが肝心か?

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