2016年8月31日水曜日

小林正樹監督、生誕100周年

この春、立花隆著「武満徹・音楽創造への旅」を読んだ際、武満徹が手がけた映画音楽の作り方を解説する下りから、この輸入版DVDをゲット。小林正樹監督1964年作品「怪談 Kwaidan」である。いつ見ようかと思いつつ時間だけが過ぎてしまった。先日、日経新聞の文化面に本年小林正樹監督生誕100年との記事を読んで、このタイミングで見てみる。

映画は小林正樹監督が初めてフルカラーの映画に取り組んだ超意欲作。怪談話4本のオムニバスになっていて、いわゆる恐怖映画では無く、見る側の内面にある不安な心情をじんわりと掻き立ててくる。映像の殆どがセットで撮られているのだが、だからこそイメージの作り込みが具体的で、その映像の色使いのこだわりからか、見終わってから各シーンが絵画的に美しく脳裏に浮かぶ。

そして武満徹が作る音がその印象を引き立てているのだが、この時期、電子音楽やミュージックコンクレートといった実験的音楽を展開していて、尺八の音にエフェクトをかけて風の音を表現したり、琵琶の音を多用したり、かなり抽象的な音作りをしている。ただ、この映画には主題になるテーマ音楽(旋律)が無い。テーマ音楽の無い映画は他にもあるが、この映画に関して言えばテーマ音楽が無い故に、映画全体の印象が心に残りにくい気がするのである。

ゴダールの様に、具体的なメロディーを使っていても、自分には見終わった時に音楽が記憶に残らないという映画もあって、映画という総合芸術と言われる表現の中で、映像と音楽との関係を少し考えさせられた。当時の日本映画の制作時間がどれもキツキツの中で作られていた中で、音楽を作る時間も僅かだったと武満徹自身も話しているのだが、この映画、当時としては多額の予算で作られたようで、その割に音楽制作に重きがおかれていない様な気がするのは自分だけだろうか?この映画の事をよく知る方がいれば意見など聞いてみたい気がするが・・・。

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